エンジンの緻密さに驚く

学科横断的な知識を活かし、まだ世の中にないものを創る

機械工学科4年 川口舞子さん

ものづくりの魅力に目覚め、3年で機械工学科に転科

両親が化学系の企業に勤めていていたり祖父が電気屋を営んでいたり、家族や親戚に理系の人が多いという環境で育ったためか、自然と私も理系の道に進みました。そういえば子どもの頃からダンゴムシの絵本を愛読するなど、理系寄りの興味が強かったのかもしれません。

最初は神奈川大学の物質生命化学科に入学したのですが、3年のときに機械工学科に転科しました。課外活動で宇宙ロケット部に参加して活動していくなかで、先輩たちのものづくりの様子を見て、「ものづくりって楽しそう。自分の表現したいことをロケットやロボットという形で表現できるって素晴らしい」と思い、転科を決意したのです。

3年からの、しかも化学系から物理系という全く異ジャンルへの転科は前例がないし難しい、考え直したらと周囲からは言われたのですが、「新しいものづくりに挑戦したい」という強い思いと、「なんとかなるだろう」という楽観で転科に踏み切りました。

写真:川口さん

理論を学んだ後、実習で確認。とても理にかなったカリキュラム

機械工学科では、旋盤や溶接などさまざまな作業を経験します。製作現場でどのような機械を使ってどのような工程で作業をするか知っていることは、将来、設計や現場を統括する立場になったときにも非常に役立つのではないでしょうか。たとえば設計をするときに、使い手や作り手のことを考えてネジの位置を考えたりすることも、実際に自分が作った経験があるからこそできることだと思います。

1年生の前半で機械工学の基礎的な知識やものづくりの基礎を学んだ後、機械解剖という実習があります。小型のエンジンを分解して再び組み立てるという実習です。
エンジンって、「ガソリンで動くすごいもの」くらいの意識しかなかったのですが、仕組みを知ると想像以上に精密なものだということがわかり新鮮な驚きがありました。

この実習の良いところは、あらかじめ座学でエンジンの仕組みについて学んだあとに実際に解剖するため、非常に興味深く取り組むことができ理解も深まる点です。とても理にかなったカリキュラムだと思います。

機械解剖はチームで行います。私たちのチームは分解も組み立ても一番早く、しかも一発でエンジンを動かすことができました。うまくできた要因はチームワークですね。分解する人、記録する人、部品を集める人と役割分担をして、苦手なことは得意な人がやるというように互いに協力し合うことで、スムーズに作業が進みました。また重要な作業は3人でトリプルチェックをしたこともよかったと思います。

チームで実習を行うことによって知らない人と仲良くなれるというメリットはもちろん、自分は何が得意か、どんな作業が好きなのかがわかることもメリットだと思います。

写真:機械解剖で使用するエンジン

実習の中で一番好きなのは機械工作実習でした。実際に企業でも使われるような巨大な工作機械を使って自分の作りたいものを作る。実践経験のある先生から使い方を教えてもらえるというだけでも気分が上がります。誰がやっても同じものができるわけではなく、人それぞれの個性が現れることも面白さですね。

溶接の実習では、2枚の板とコの字型の部品を溶接して箱を作り、先生が最後に水を入れて完成度をチェックします。溶接がきれいにできていれば水漏れしないのですが、うまくできていないと水漏れしてしまう。私も最初はうまくできなかったのですが、練習するうちにどんどん上達して、テストのときには水漏れなし。とても嬉しかったですね。

写真:川口さん

「世の中にないものを創る」という夢に向かって

3年生になると、これまで学んだ基礎知識を活用して、実験・解析・考察し、レポートにまとめるという作業が始まります。その傍ら、さまざまな研究室を見学して、4年次にどの研究室に入るかを決めます。

私は、江上正先生のロボット制御システム研究室に入ることに決めました。この研究室は、宇宙エレベータの開発で知られていますが、江上先生の「世の中にない物を創る」という信念に強く惹かれたからです。

私が卒業研究で選んだテーマは「架空送電鉄塔を昇降する重量物搬送ロボットの開発」。これは、宇宙エレベータクライマーの技術を応用したもので、簡単に説明すると、ロープを伝って高い鉄塔に登り、重い荷物を上まで運ぶロボットの開発です。

現状では、高所に重量物を運ぶにはウインチを使用しますが、設置が難しい場所があることや安全管理のために人員が最低3名は必要になります。しかしこのロボットが完成すれば軽量なロープとロボットだけで重量物を運ぶことができるため、これまで設置が難しかった場所でも運用が可能になると考えています。将来的には宇宙空間に安全に物資を運ぶことを目指しています。

宇宙ロケット部では継続してロケットの開発に関わっていますが、世の中をあっと驚かせるようなものをつくってみたいですね。

神奈川大学ロケット発射風景
写真:道浦直人氏提供

学科横断的な知識を活かして私にしかできないことをやる

卒業後は、大学院に残って研究を続けるつもりです。

私は物質生命化学科で、主に電池の研究をしてきました。今は機械工学科で学んでいますが、物質生命化学と機械工学の知識を活かして、私にしかできないことをやりたい。

たとえば電気自動車やドローンはモーターとバッテリーの組み合わせで動きます。まさに、私が学んできた物質生命化学と機械工学の両方の知識が必要とされる分野です。

また、物質生命化学科では物質・ナノサイエンスも学んできました。この知識を活かして、たとえばロボットは従来、金属で作られてきましたが、炭素繊維やプラスチックなど新素材を使って、これまでにないロボットが作れるかもしれない。分野を超えた基礎知識のおかげで、いろいろな可能性を拡げることができるのではないかと思います。

大学院では、学部生の時とは違う、一段階上の活躍の場があります。いろいろな学会に参加して、他分野の研究者と交流し、自分の研究を発表し広く知ってもらう機会も増えます。学科横断的にいろいろなことを学びつつ、さまざまな分野の人とのネットワークも作っていきたい。今はとにかく知識を吸収して、未来のものづくりに貢献できる人間になりたいです。

写真:川口さん

Practice

バラして、作って、学ぶ。
機械工学の基礎は実習から
イメージ:機械実習
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