設計はパズルのようで面白い

4年間で自分の進むべき道を見つけ大きく成長できた

機械工学科4年 八木風成さん

さまざまな実習を通して機械工学の基本を体得する

機械いじりが好きな兄の影響で、理系に進路を定めました。神奈川大学は、宇宙エレベーターやロケットの研究でも有名で、理系に強い大学という印象はありましたね。

神奈川大学の機械工学科の一番の特徴は、実践的な授業が多いこと。たとえば1年目には、さまざまな道具を使ってものの測定や計測を行ったり、溶接や、旋盤を使った切削などを行ったりします。操作はそれほど難しくはないのですが、溶接機械は使い方を間違えたら感電することもありますし、旋盤も正しく扱わないと大怪我にもつながるので厳しく教えられました。

旋盤を使った実習では、真鍮の六角柱を削って円柱にし、中をくり抜いてペン立てを作るという実習がありました。旋盤一つでさまざまな加工ができることは新鮮な驚きでとても印象的でしたね。コンピュータでプログラムを組み、NC工作機械という機械にプログラムを読み込ませてものを削るという実習もありました。

イメージ写真:八木さんのノート

「MデザインA」という授業では、簡単なロボットを作ります。ロボットアームを動かして綱引きをしたりキューブを持ち上げる競技を行います。チームで競争するのがゲーム感覚で楽しいのですが、それだけではなく、この授業によって、機械工学の基礎となる4力(リキ)=「材料力学」、「流体力学」、「熱力学」、「機械力学」をまんべんなく学ぶことができました。

「機械製図」の実習もありました。一年次には手描きによる製図法を学び、2年では平面CAD、3年では3D-CADというように段階的に学んでいきます。最終的にはソリッドワークスという、3D-CADの資格取得を目指します。一般企業でも通用する資格で、取得のための集中講座もあるのでありがたいですね。

実習の中で印象に残っているのが、鉄板と厚紙を利用して強度の高い橋を作る授業です。チーム対抗で行い、僕のチームは優勝することができました。この授業は、最初に座学で、なぜ物が破壊されるのか、荷重によってどのように物が変形するのかなどを学び、それらの知識を踏まえて壊れない橋を作るというものでした。やみくもに強い橋を作るのではなく、理論を学んだ上で実践に取り組むというところが非常に腹落ち感のある授業でした。

座学も実習も、すべての学びがつながっている

基礎的な実習を終えると、「機械解剖」という実習があります。これは、小型のエンジンを分解して再び組み立てるという実習です。

分解するときに手順を一つひとつ正確にメモして、そのメモを見ながら組み立てたのに、なぜかエンジンがかからない。原因を探ると複数あるネジの取り付け位置が違っていました。部品の位置ひとつ違ってもだめだということを、身をもって体験しました。また、機械解剖にはこれまで習った計測などの基礎の知識が役立ちましたし、エンジンの仕組みを頭で理解するのではなく、目で見て理解することができました。これまで学んできた理論と現実が結びついて、「ああ、こういうことだったんだ!」と、すごく理解が深まりました。

1、2年で学んだ基礎を活かし、3年生ではさらに難しい実験に取り組みます。たとえば、物を引っ張ったり、回転させたり、振動させたりし、なぜそのような現象が起こるのかを、これまで学んできた機械力学、流体力学、材料力学、熱力学、制御工学などの理論を使って考察し、レポートを仕上げます。これまで実習で経験したこと、学んだ理論がすべてつながり、無駄な授業はひとつもなかったなと思いますね。

写真:八木さん

パズルを組み合わせるようなワクワク感が設計の魅力

1年から3年の間にさまざまな経験をする中で、機械工学の中でも自分は何が好きなのかが絞られてきました。僕が一番ワクワクしたのは設計です。

各部品をどのように組み立てればよいか。部品同士が接する部分の表面性状を考えて、擦れ合っても削れないためにはどうすればいいか、機械の性能を上げつつコストを下げるにはどうすればいいかなど、さまざまな条件をパズルのように組み合わせていくことが僕には面白い。チームで作業をするときは、いつも設計を担当するようになっていました。

イメージ写真

究極の緻密さを求められるマザーマシン開発に惹かれて

4年生になってからは中尾陽一先生の研究室に入り、工作機械開発を研究テーマにしました。工作機械とは、マザーマシーンとも呼ばれるもので、さまざまな“機械を作るための機械”です。

絵をコピーするときに、原画の精度が低いと質の悪いコピーしかできないのと同じように、工作機械の精度が低いと、そこから作られる機械も精度の低いものしかできません。ナノメートルレベルの正確さが求められる厳しい世界に憧れを感じてこの道に進みたいと思いました。

機械の精度が乱れる要因は、熱による膨張や、振動による回転軸のずれなどです。それらをできるだけ発生させないためにどうするか、4力の知識を総動員して設計するところに面白さを感じています。

写真:八木さん

答えのない研究をやり遂げたことで大きく成長できた

春からは大学院に進学します。中尾研究室は企業との共同研究が多いので、今からとても楽しみです。先輩たちは面倒見がよく、解析ソフトの使い方や実験器具の使い方を丁寧に教えてくれたり、忙しい研究の合間を縫って卒論について助言をくれたりしました。学会の前には朝早くから夜遅くまで資料を準備している姿を見て、研究に対する姿勢のようなものも学ばされます。

大学の4年間を振り返ると、4年生のときが一番成長したかなと思います。卒業研究では切削機械の粉塵を回収する機械の設計を行いました。研究には答えがない。先生も先輩も答えはわからない。だから、自分で本を読んで調べ、自分で考え、自分で検証して答えを探していくしかない。苦しくはありましたが、だからこそ成長できたのだと思います。

写真:八木さん

Practice

バラして、作って、学ぶ。
機械工学の基礎は実習から
イメージ:機械実習
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